朝礼 方針発表会 研修 社内報に最適

魅了する話し手にはサービス精神がある

まるでドラマのような臨場感

クライアントの会長は、話が上手だ。上手、というよりも”惹かれる”が適切な表現かもしれません。まず、話題です。自分では経験しないであろう冒険のような挑戦話が多く、その全てが「本当にあった話」だけに驚きの連続です。

次に、声。不快感は感じませんが、お世辞にも美声ではありません。しかし、スピードとリズムは抜群です。耳に語りかけるというよりも、自分の話を楽しんでもらいたい、とまるで食事を提供するかのように相手の反応を見ており、こちらが笑顔でいると、それ以上の笑顔で話しかけてきます。

話題、リズム共に優れているのですが、何よりそれらを活かす話の設計=話の進め方がすばらしい。臨場感があり、まるでドラマを観ているかのようにワクワクさせます。もっと聞きたい、次はなんだろう、と期待が湧いてきます。

方針発表会でも、その力はいかんなく発揮されていました。スピーチの内容に触れることはできませんが、聞き終えた後、「自分たちならやれる」「その先にある目標に向かって頑張ろう」と、会場全体が高揚感に包まれているのを感じました。

「伝わる話し方」は、書店に行けば山ほど並んでいます。

ただ、スピーチに”魅力”があるかないかは方法論ではないように思えます。その人が重ねてきた”経験の深さ”が反映してくるもので、スピーチの上手い人のマネをしたところで、その人のように魅力あるスピーチはできないということです。

本には書かれていない準備すべきこと

時系列や会話の内容がバラバラで同じことを繰り返し述べている、そのようなスピーチを聞いたことはありませんか?

チリの大統領だった故サルバドル・アジェンデ氏が最後のラジオ演説で、「私はなによりみなさんに呼びかけたい。わが大地の慎み深い女性たちに」「私はなによりみなさんに呼びかけたい。チリの専門職の人たちに」「私はなによりみなさんに呼びかけたい。チリの若者たちに」「私はなによりみなさんに呼びかけたい。チリの男たちに、労働者に、農民たちに」と要点を繰り返すアナフォラという手法を用いました。

これは、誰に向けてのメッセージかを強調することで、自分の考えを聴衆と共有できることになります。実際、短い言葉を畳みかけることによって聴衆の感情に訴えることに成功したといいます。それとは異なり、要点から外れた部分を何度も繰り返すのは、聞き手を間延びさせ疲労感を与えるだけです。

準備を行わなくとも理路整然とスピーチできる人は、そう多くはいません。経験の深さを補うのは、本には書かれていない『準備の質』です。聴衆に何を届けたいのか、そのことを忘れ本に書かれている通りに情報を羅列し「伝えた」気になる。これは、自己満足であり登壇する意味はありません。聴衆を惹き込み、伝えたかったことを「伝わる」に変えるのは、内に秘めた情熱+聴衆に寄り添う設計です。

そして、最後に加える調味料は、聴衆を「喜ばせる」「楽しませる」「ワクワクさせる」など、登壇者のサービス精神です。