西日本営業部 ストアプロ 2019年入社 重盛洋介
①2年間の留年で得た未来の糧
「今、何を追いかけているか」と尋ねられたら、経営者として様々なことにチャレンジしていた父の背中だと答えます。
私の父は、長野で4店舗の薬局を経営していました。小さい頃の記憶は、父の白衣姿です。一店舗目は、店舗兼自宅でしたから父の働く姿を目にしていました。私が大学生になる頃には、3店舗経営をしていましたから薬剤師の父の姿より、経営者として「すごいな」と素直に尊敬していました。そんな父を病が襲います。4店舗目の話を進めていた頃、進行性のガンが見つかりました。転移が速く、発見時には余命半年といわれました。
もし自分が父の立場だったら、恐らく生きる気力を失っていると思います。しかし、父は出来る治療の計画を立てると、直ぐに4店舗目の開店に向け精力的に動き出しました。
家族は、そんな父に尋ねました。「ゆっくりしないの?」「好きなことをして過ごさないの」すると父は、「薬局は多くの人の健康サポートをできる場所。だから、一軒でも多く作りたい」と。自分のカラダが限界に達しているのに、人の健康を気遣う父。想いの強さは、病と戦う力となりました。医者から宣告されていた期間より三ヶ月長く生き、4店舗目のオープンの翌月、青空が眩しい日に逝きました。最後の最後まで自分の信念を貫き通した父は、尊敬だけでは言い表せない特別な存在です。
ただ、あまりにも偉大すぎて大学生の私は「こんな風には慣れないな」と諦めていました。
自然と、父とは違う人生を模索しはじめて、大学1年からカウンターだけ20席ほどのBarでバイトをはじめました。シフトはほぼ毎日、いつしか常連のお客様の話し相手になり店も任されるようになりました。自然と年齢差を超えたコミュニケーションと経営とは何か、を学ぶことができました。
しかし、夜のバイトは学業に影響し留年。焦りを感じ、バイトを自宅近くのピザ屋に変えました。最初は配送を任されていましたが、いつしかバイトリーダー的な業務を受け持つようになり、メニュー開発から配送の効率化まで担当するようになりました。これが面白くてバイトに没頭、もう1年留年してしまいました。
ただ、振り返りいえることは、学びが多く無駄ではなかったこと。『自分に訪れる出来事は、未来のための糧』だと思います。
②誰よりも仕事を楽しんでいる
同年代と比べ、社会への一歩は遅れましたが、その分、就職活動時、自分が何をやりたいかは明確でした。“与えられるのではなく、自分で描く”。そこで、経営陣に近い場所で働ける、小規模の広告代理店を中心に就職活動を行っていました。
そんな時、姉から「自分は大手の化粧品会社で働き、ヘアメイクアーティストとしての独立を夢見て小規模の会社へと転職した。しかし、ここで学べるのは小規模の会社の経営。より、大きい企業で働くことで学びも多い」とアドバイスを受けました。
この会社に入社して正解でした。天職のように思えますし、恐らく、誰よりも仕事を楽しんでいる、と自負しています。
特に面白いと感じているのは、お客様が納得されるプロセスを考え、自分の言葉で発することです。戦略にも似ていて、結果が良ければ、数字が自分の評価になります。
プロセスを考える際に、お客様が『本当に望んでいる』ことを明確に掴むことを大切にしています。その為には、お客様が発する言葉だけではなく、心の底にあるお気持ちを聞き出すことが大切だと思います。求められている商品が欲しい理由を聞き出すことで、お客様にとって本当の意味で適した商品を提供することができます。それが、最終的には満足度へと繋がっていくものかと。
③「売りたい」という気持ちは自分勝手になる
そういった思いになったのは、あるお客様との出会いがきっかけです。お客様は、「雑誌に掲載されたビンテージレザージャケットを見たい」とご来店されました。
実物を見ると「色、デザイン共にカッコイイね」と気に入られました。しかし、試着室から出てくると笑顔が消えていました。理由は、背中に入っている血筋(チスジ)が気になるとのことでした。確かに、斜に少し目立血筋が入っていました。私たち販売員にとって、革ジャンの血筋はあって当たり前。「血筋は仕方ないんですよね・・」と自然と口から出ていました。完全に間違った説明でした。お客様から「革ジャンは他にも持っています。血筋があるのも分かっています。問題は入り方で、個体毎に違いますよね。納得して着ているか否かで、気分は違いますよね‥」と。
言われた瞬間、ハッ、としました。お客様は笑いながら仰っていましたが、一瞬でも不快な思いをさせたのは確かです。
「直ぐに在庫を確認してみます。比べていただき、血筋の入り方がご納得頂けるものをお選び頂ければと思います」。これが、お客様のお気持ちを考えた本来あるべきサービスでした。
恐らく、心のどこかで、自店にあるこの一品を売り切りたい、という気持ちがあったのだと思います。自分勝手な気持ちが、判断を曇らせました。今でこそ、販売ランキングで上位に入ることができるようになりましたが、これもお客様のご指摘があったからこそ。この恩に応えるため、今後も”お客様の納得度”を第一に考えた接客に徹したいと思います。