営業部から開発部に異動して、1年が過ぎました。異動のきっかけは、営業部に所属していたときに、社長から声をかけていただいたExplorer-Gattackの開発プロジェクト、キュウマルへの参加でした。
営業部時代に私が学んだことは、何歩も先ゆくデザインや機能は求められていないということです。そういった商品は、店頭に並んだときに、確かにアイキャッチになり、お客様は足を止めていただけます。ところが、お話をしていく中で自分の使い方や欲している機能ではないことが分かると、途端に興味が薄れていきます。
商品開発部がマーケティングを疎かにしている、というわけではありません。お客様のニーズを頭に入れてから新たな発想を生み出しているのですが、発想を生み出す質が的を得たものかどうかということです。
私が今大切にしているのは、“不易と流行”です。これは、以前、あるサイトで読んだお話から影響を受けました。
不易とは、時代を通じて変わらないこと不変的なことです。例えば、Explorer-Gattackのようなリュックサックの歴史を紐解くと、海外では猟師が仕留めた獲物を背負ったことがはじまりで、日本では木材と藁で作った背負子が起源ともいえます。山登りが広まった頃、登山者の荷物は案内人が背負子で運び、本人はは風呂敷を抱えて登ったとか。
時代が流れても荷物を運ぶ道具であることは変わらず、変わったのはリュックの素材、機能、使い心地です。それを加速させたのは、戦争や登山といった使用シーンを想定して改良されたからです。
次に流行に目を移すと、現在の消費行動は三つに分かれています。本格的な登山や災害現場で使用されるプロ使用、パソコンや書類などを入れるビジネス使用、本や携帯などを入れるキャンパス使用です。
この中でキャンパス使用は、データの分析から国内ではスポーツメーカーが出すものに人気が集まり、ファッションブランドは不利な状況です。
そこで私が注目しているのは、ビジネス使用です。ビジネス仕様は、全世界のビジネスマンを対象にすることができます。
「そんな簡単ではないだろう」という声が聞こえてきます。無論、簡単ではありません。しかし、リュックの不変的な目的、荷物を背負う、といった点を徹底的に追求していくことで、私たちなら必ず消費者ニーズに応える製品は作れると思っています。
スーツに似合うのは身長に合わせたサイズ展開
マーケティングの世界では“千三つ”という言葉が使われます。これは、新商品1000のうち、翌年まで生き残るのはせいぜい3つという生存競争の厳しさを表現しています。では、どうしたら愛される製品として生き残れるか。
私の答えは、一つです。お客様のニーズに対し、0.5歩だけ先にある提案です。例えば、身長160センチと190センチの男性が同じリュックを背負っときの、全体の印象を思い描いてください。両者ともスーツを着ています。スーツの印象を崩さないようにするにはどうすべきか、を考えると服にサイズがあるようにリュックにも似合うサイズが必要です。
先進性の技術を取り入れることも大切ですが、元々求められている機能はシンプルなわけで、後は「なるほど、考えましたね」とお客様から評価をいただける提案が必要だと考えます。
開発部 マーケティング担当 佐々木 誠